新しい部屋

住んでいる街、駅前の古びたビル最上階にある隠れ家カフェと自称するお店へいった。そこへ向かうエレベーターの壁はステッカーと落書きでいっぱいに満たされていて、1階から8階までの上昇する速度に合わせて、 正しい4拍でドラムマシンの生温いキックが頭上から足元へ移っていく。あいだの階にはクラブやガールズバーなどが水家業しているのだと、入り口で看板を目にした記憶が浮かびあがる。 加速度が0になり、扉がひらくとFrank Oceanの声がべつの規則をもった流速で入り込んでくる。フランク・オーシャンっていい名前だな、素直な海洋。

音響への気遣い、とくに選曲についてよく考える。それはもし将来自分が喫茶店を開くなら、BGMをどうするだろうかという妄想から流れ着いたもの。8階の窓から見下ろす景色には止めどない雨が降り注いでいて、これが続けばこの街も海洋になる。

none