新しい部屋

暑さのなか眠っていると夢をみた。大きな音がして突然、複数の直径3mほどの火玉がビルの向こう側から飛んでくる。逃げ惑う人々のものすごい混雑で身動きがとれない。不規則なタイミングで何度もそれは飛んでくる。ひろい公園の横道を逃げまわっている途中、放射方向に目をやると巨大な人間が火球を投げている姿を目撃した。どうやら全世界同時デカダンの潮流とは別の意思でこの崩壊に加担しているようだった。火球の被害を受けない地下鉄はさらに混んでいて、上流階級の人々はほとんど地中に埋め込まれたシェルターに避難している。地下に建造されたホテルはここら一帯の避難所に指定されているが、許容量をはるかに超えた避難民の数から治安が悪く火球と比べても地上の方がずっと安全だった。救いのない幕引き。ぼくは最後まで地上で暮らすことをやめなかった。

夢から覚めると幼年期のころ買ってもらった絵本を思い出した。それは絵本を作る絵本で、白紙のページと四つ折りになった大きな地図に、自由に思い描いた物語とその地形を自ら作り出していく本。当時そこに描いた世界にすごく似ていると思った。

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