昨晩、四つの目が黄色く光っていた。
田舎では土地の者かそうでないか感覚の線引きがされている。
今朝、道に積もった雪が土と混ざっていた。
半透明になった雪に土が細かく沈殿して、
世辞にも綺麗とはいえない。
世辞?
世辞というより季節に対する敬意のようなものかもしれない。
年末、寒さと人々の行動の温度が違う時期。
私も目の前の不確定な物から逃げ出して予定を優先させた。師走、
人口減少に伴って有料の駐車場と化した元・空地。
車は一台も止まっていない。落ち葉が角にたまっている。
宇宙人に改造され、自己の意識では行動できなくなった男と、事故に遭い色彩が芽生えた男は同一人物だった。
カラカラと笑い、しかし事実だと頑なに語った。
事実だったろうか。
脳に焼きつく前に両目に残像を残しつつ、行儀悪くそらしたあの冬の寒い午前。
怪奇?
視界から外したいときに使う言葉。
あの不確定な物から逃げ出した発端の場所に立っている。
日記を書き始めたのはその頃だ。
具体的に私の行動と思考をなぞり、時間を伴った空想を書き出す。
ありもしないスピーカーを設計図に起こしている。
愛や、罪について考えている場合ではなかった。
これは愛にごく近く、しかし会話の中に混入しない呪いだ。
外壁を取り囲んでいる。
誰かを想うよりも先に行動へ移す脳に転換する。
さまよう体、いきついた場所でも立ち止まらせてはくれない。
さまようという言葉は軽さを伴うが、足が血みどろになっても視界が白く濁っても立ち止まることを許されないことと同じだ。
徘徊、が最も近い言葉だろう。
失踪。はできなかった。いつも、歩いた後は偏光色の粘膜が続いている。
今もこうして時間も場所も示さず誰かに地図を渡しているのに。