新しい部屋

だし巻き卵を作って、白米、納豆のパック、剥いた柿を並べてお弁当箱に詰める。自分だけのために料理作るのをめんどくさく感じるようになった。誰かとのために作りたいと思う。買い出しが必要なものがあったので袋を下げて一個先のバス停から乗車する。バス停のそばにある証明写真機のカーテンからジャージを履いた足が出ている。スーパーの前で座り込む白髪のおじいさんたちの会話は、盛り上がった部分だけ声が大きくなって内容がわかる。

3日分くらいの食材をカゴにいれる。レジで店員さんに手渡すと財布を家に忘れたことに気がつく。財布を家に忘れてしまって、取りに帰ってもいいですか、と伝える。すぐですか?と聞かれて10分くらいで帰ってきますと返す。自動ドアを出ると仕事の電話が鳴る。ちょうど家とスーパーの往復でやりとりが終わる。レジに再び並びなおす。さっきの店員さんがお帰りなさいと言ってくれる。前で会計をしているお爺さんが「お金持ってくるの忘れちゃった」と言って豚肉を返していた。

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